白黒部屋のねこたまご

気ままに花咲く思索の庭園。物語や理系関連に対し益体もないことを呟くブログ。

劇場アニメ『君の膵臓をたべたい』感想

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僕の春の思い出。
女の一生の思い出。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
衝撃的なタイトルから端を発し、書籍に実写映画化、そして昨年9月には劇場アニメとして全国上映を果たし、一躍世を席巻した感動巨編『君の膵臓をたべたい』。
 
特に劇場アニメの方は、昨月にDVDBlu-rayが発売となりました。
早速購入した私は、映画館ですでに5回も見ているにも飽きたらず、また視聴。
 
……いいですね。
何度見てもあの映画は、本当に心が締め付けられます。
 
 
 
そんなわけで、今日はこの劇場アニメ『君の膵臓をたべたい』、通称”キミスイ”の感想……
それも、ネタバレなしで、
感想というよりは”この物語で私が気に入ったところ”を列挙し、キミスイの魅力をお伝えしていきたいなと思います(超久しぶりながら)。
 
 
 
アニメ公式サイト↓
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
私はそもそもこの作品を、店頭で並んでいたのを見た程度にしか知らず、
その書籍を買ってもいなければ、実写映画すらも見に行ってない、
 
本当に前情報も何もない、大まかなストーリーを知っているくらいの、まっさらな状態で映画館に行ったのでした。
(強いて言えば同作者の著書『また、同じ夢を見ていた』を読んだことがあるくらい)
 
 
この歳となってはそうそうないであろう、純粋な視線で物語を見れた瞬間でした。
だからあんなにも心を打たれたのだと思います。
 
ぶっちゃけ、キミスイ私がこれまで見たアニメ作品、映画を含めても、ぶっちぎりで一番大好きだと言い張れる作品です。
(エロゲは含まない。恋カケがあるし)
 
 
そのキミスイの一番の魅力……
多くの人は、その悲しいストーリーやタイトルを俎上に載せるところでしょうが、
私は、作品の雰囲気と、二人の独特な恋愛観に、それがあるのだと思っております。
 
 
 
 
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・作品の雰囲気について
 
そもそもエロゲや映画などの映像作品は、単にストーリーが良いだけでは良作と言われるには足りません。
 
これはもう誰もが周知のとおり、映像作品を形作っているものは絵や音楽、演者や演出のすべてです。
シナリオというのはその根幹に過ぎず、抽象的なシナリオ像を具体的に表現させたものが上記のものになるわけです。
 
つまり、絵や音楽等の芸術・技術は、シナリオの表象であると考えてもいい。
 
 
シナリオの持ち味を活かすには、当然ながらその表象方法が適切でないといけない。
 
以前にもどこかでお話した通り、『日常』のような根っからのコメディ系に『フルーツバスケット』のような純恋愛系の作画は似合わないでしょう。つまりそういうことです。
 
 
 
評論家を気取るわけではありませんが、私は、そのシナリオの持つ雰囲気と表象されているものが合致していないと、とても気持ち悪く感じるのです。誰だってそうだと思いますが。
 
 
では、このキミスイではどうだったかというと、これがまた面白い雰囲気づくりをしていたわけですね。
 
 
 
 
絵柄に関してはサムネや公式サイトにもあるような、まぁいたって普通の絵柄……と思いきや、
考えてみれば今までの学園もの(もしくは同じ雰囲気を持った恋愛系のもの)で、このような普遍的な作画というのはあまり例がない気がします。
 
こと恋愛系においては少女漫画風のタッチがまず浮かぶし、学園ものといえば女の子キャラは特に萌絵に走った、主張の強いタッチばかりな気もする。
また、色彩を濃くすればするだけ、感傷的な雰囲気には遠ざかる。
 
かの有名な『君の名は。』は、似たような作画でありながら、あれはそもそも世界観がファンタジーでありましたから違和感なく見れたのであって、
キミスイのような学園ものでこの作画は、少々場違いなようにも感じる。
 
 
つまるところ、萌絵に走らない、しかしリアルさも出し過ぎない、色彩を濃いめに設定した、言ってしまえば”パッと見特徴のない絵柄”
これが、キミスイの絵柄でした。さくらのキャラデザは可愛いですけどね。
 
 
 
 
それがどれだけの効果をもたらしたのか。
これは実際に見に行かなくてもPVなんかで分かるかと思いますが、
 
色彩を濃くし、また他に目立った特徴を表に出さないことで、
とある一瞬のシーンでのみ光加減に富むことで、瞬間的な感動とエモーショナルな雰囲気の生成に成功したのだと、私は考えています。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
起伏の少ない学園ものですから、大事なシーンではやはり目立った演出を取り入れたい。
その中で、夕陽や朝日を基調とした光の演出は、感傷的な作画(恋カケのような薄い絵柄)ではできない演出だと思う。
 
こういうのを随所に入れることによって、思わずはっと言わせるような、視聴者の脳裏に残りやすい場面ができあがるわけです。
この、”脳裏に残りやすい”というのが重要なのです。
 
 
 
また、本作品は”春”というワードが物語に大きく関わっており、それだけに”桜”というのは欠かせない演出です。
 
しかし、本作で桜が出てくるのは序盤の30分程度のみ。
終盤のクライマックスではほとんど登場しません。時期的にしょうがないけど。
 
大事な要素でありながら、それが出てくるのが、まだ感動も何もない最初の部分だけというのは、また思いきった設計。
しかしその最初の部分で出てくる桜の演出が、これまた細かい
 
上述した光加減もさることながら、花びら一枚一枚に丁寧な施しを入れてあるのがわかります。
 
 
 
………で、なぜこのような作画の話ばかりしたかというと、
 
私が言いたいのは、
作画が細かかったり、ただ丁寧であればいいという話ではなく、
それが重要な貯蓄になる演出だったのかどうか、ということです。
 
 
 
 
 
 
こと感動作においては、そこに至るまでの経緯が肝心なのは当たり前な話ですが、
その”経緯”というのにも、”ストーリーの経緯”と”雰囲気づくりの経緯”があると、私は思っています。
 
ただストーリーの経緯だけを貯蓄するだけなら、小説にだってできる。
 
しかし、文では描ききれないストーリーの雰囲気を貯蓄するのは、映像作品にしかできないことです。
 
しかも、ただつらつらと同じ雰囲気になるよう作画をしていけばいいということでもなく。
作中にメリハリを持たせたりして、
いかに感動のラストまでに、視聴者に印象深いシーンを与えたか、いかにそれを感傷的に伝えられたかが一番の勝負になるわけです。
 
 
それが成功したとき、視聴者は、まるで物語に包まれたかのような、オーバーフローしたかのような、大きな感動に覆われる。
 
 
そのひとつの手法として、キミスイの作画演出は、
光加減の絶妙なメリハリもあり、序盤だけに桜という感傷的な要素を投入するなどして、うまいとこ貯蓄に成功しているのだと思います。
 
 
 
 
まとめとしては、キミスイの雰囲気づくりは近年まれに見る丁寧さでした、というところかな。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
・二人の独特な恋愛観について
 
これに関してはネタバレになるので深くは語れませんが、ひとつだけ言っておくと、キミスイの中で描かれている恋愛というのは、多くの人が想像するようなありふれたものではない
 
そりゃヒロインが死ぬお話なんだから普通じゃないのは当たり前でしょー…と思うかもしれないが、それを踏まえても、だ。
 
 
そもそも”恋愛”っていったい何なのか、真剣に考えたことはあるだろうか?
 
まぁ考えたところで答えのない命題だし、そんなものに熟孝するより実際に恋しようぜーってなるのもわからなくはないが、今一度、真剣に考えてみてほしい。
 
自分の中で、恋愛とはこうだと言える何かがあるのなら、また言える何かが無くても真剣に考えたことがありさえすれば、キミスイで描かれている恋愛観のその良さがすっと理解できる。
 
 
まるで答えもない恋愛というものに、作中で登場する二人はほぼ明確な答えを示しているのだ。
 
しかし、それがいかに尊い感情であるものか、どれほど感傷的なものであるかを理解するのには、きっと惰性で恋愛を考えているような人には掴めない。
 
だから見るなとは言わないけれど、この”独特な恋愛観”こそがキミスイの根幹のテーマにもなっており、一番の魅力たらしめる要素なので、もったいないなとは思います。
 
 
 
 
主人公やヒロインが培ってきた、二人だけの”恋愛”が、ラストに終わりを迎える時……そのときこそが、この作品の一番の見せ場、クライマックスなのです。
 
まぁそんなに難しく考えなくても作中で明確に答えが出ているので、せめてそういう部分に目を向けてくれたら、きっと、このキミスイの良さがあなたにもわかることでしょう。
 
 
 
 
私自身、一度大学のとある講義のレポートにて、本気で恋愛とはなにかについて考えて提出した経験もあり、
また一番好きな作品がそもそもそういう系統の作品であったことから、恋愛に関しては人並み以上にアンテナびんびんなのですが、
 
それだけに、独特な恋愛観を謳った本作は、心をつんざくような衝撃を与えてきました。もう、本当に。
 
 
 
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他にも、音楽関連にもおススメをします。
 
作中のBGMには目立ったものはありませんが、それもこれも、すべてはEDテーマを引き立たせるものだと考えれば納得もの。
 
ぶっちゃけ私も、EDテーマに涙腺の最終防衛ラインを切られたようなものですので…

 

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 (あ、でも、メインテーマかな?Blu-rayのオプション画面で流れているあのBGMは印象深かったです。あれ好きです)
 
 
 
 
 
 
 
短いですが、今回はこれで終わり。
 
まとめとして、劇場アニメ『君の膵臓をたべたい』は、
 
感動作としての雰囲気づくりの上手さもさることながら、
作中で描かれているその”独特な恋愛観”がなによりも魅力的な、
近年まれに見る傑作アニメ映画だと言い張ります。
 
普遍的な内容・作画だけにどの層もとっかかりやすいので、全力で視聴することをお勧めします。
 
違法視聴とかではなく、Blu-ray買って、おうちのテレビで見た方がより感動できますよ。
 
 
 
 
了。
気が向いたらネタバレ全開でレビューもしてみたいですね。その方が語りやすいし。

 

 

君の膵臓をたべたい (双葉文庫)

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